犬がくれる気持ち

初めて犬を飼ったのは小学校に入学した頃だった。

知り合いの家で生まれた大人になっても小柄な雑種の子で、動物が大好きだった私は嬉しくてうれしくてずっと傍にいた。

でも、体が弱かったその子とはたった3年でお別れすることになってしまった。
私はまだ幼くて、ただただ悲しくて辛くて何日も泣いた。別れがつらかった。

その日からどんな生き物も飼うことができなかった。

それから数年、父が寒い雨の降る日に1歳にならないくらいの子犬を連れて帰ってきた。家の近くの橋で震えていたそうだ。

初めての別れから時が経ち、私も少し大人になっていたし、助けなきゃいけないという思いで家族に迎えることにした。

数日ですっかり元気に走り回るようになったその子に、私は「くりーむ」と名付けた。
くりーむは雑種で鼻と耳が黒くてがっちりしたパワフルな男の子。

散歩に行くとよく引きづり回されて、リードから手が離れてしまって行方不明になり泣きながら探した。

幸い田舎なので人通りも車通りも多くなかったため、事故にあうこともなくご飯の頃にはケロッと家に戻ってきた。

くりーむが家族になってから10年近くが過ぎ、私は仕事で実家を離れた。
年1回ほどしか実家には帰らず、何年も忙しい日を過ごしていた。

実家に帰る度に引っ張る力が弱くなって、黒かった耳と口はどんどん白髪交じりになっていた。

くりーむが17歳になった頃、ようやく仕事に余裕ができてこまめに実家に帰ることができるようになった。

くりーむは起き上がるのがやっとになっていた。
トイレとご飯の時以外は大体寝ているらしい。

なのに私が行くと体を起こして尻尾を大回転させて喜んで散歩に行こうと誘ってくれた。

涙が止まらなかった。

数週間後には目が見えなくなってトイレもご飯も一人ではできなくなっていた。
もう何もしてあげられることがない状況になっていた。

もっとああしていれば、こうしていれば、そんなことばかり考えていた。

でもくりーむはそんなこと気にしてないよ、というようにずっと私の手をなめていた。

そのままくりーむは天国に行ってしまった。
17年、本当によく生きてくれた。

二度目の愛犬との別れは初めての時とは違った。

最後まで生き切った、そんな姿を見てまたクリームみたいな子と家族になりたいという気持ちの方が強かった。

くりーむがいたから家族の絆が強まって、家族が笑顔の時間が増えた。

くりーむが天国に行ってから丁度4年、やっぱり私は今も犬と暮らしている。
犬は、悲しいことよりも、辛いことよりも、楽しくて嬉しいことをたくさんくれる。

それをくりーむが教えてくれた。

ありがとう。

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